昨晩読了して号泣。翌朝瞼が腫れて大変なことに。
映画版をTVで見ていたのであらすじは把握していました。当時、映画に関しては批判の声もあったと記憶していますが、私は映画と小説を頭の中で上手に補足させながら読むことができたのでよかったです。
原作読了後の映画版感想箇条書
- 記者は女性である必要はなかったけどそうしないと登場人物が男ばかりになってしまうから仕方がない。
- 弁護士の妻は原作ではただの冷たい妻だけど、映画では高島礼子が演じていて、夫を馬鹿にしながらも根底に温かみのある妻役で、演出としてはそちらの方がよかった。
- 梶一家が事件前にとても仲がいい家族だったという描写が、映画ではしつこいくらいあったけれども、原作ではその辺りはあっさりしている。
- 「空白の二日間」の謎解きも原作は読者置き去り型だが映画はリアルタイム型で、見せ方の違いが面白かった
梶という警察官を巡って様々な人間の思惑や感情が絡み合った物語は宮本輝の『優駿 (宮本輝全集)』を連想させられた。優駿はただの青春恋愛映画になってしまっていたので、こちらの映画は原作に対してまだ良心的だろう。それはともかく、『優駿』はある馬をめぐっての物語であり、『半落ち』は梶という警察官を巡っての物語だが周りにいる人間たちに対して沈黙を貫く梶は馬と変わらないように見える。
横山秀夫は梶の「空白の二日間」という謎を、読者の前ににんじんのようにぶら下げておいて、書きたかったものは梶をめぐる人びとの、ありきたりな言い方だが「人間ドラマ」だ。だからミステリとして読むと物足りなさが残ってしまうかもしれない。けれどいつの間にか、法廷の場面で検事・弁護士・警察官が立場を超えて梶を「見守った」あの視線で物語を追っていることに気付くのだ。
梶の周りの人々は、組織に、肉親や家族に、色々なしがらみを背負いながら自分の信念を貫こうと試行錯誤する。躓いても、ずるくても、そんな彼らはとてもかっこいい。志木と目で会話をした古賀。あれは男同士でなければできないだろうなぁ・・・ちぇっ!
- 作者: 横山秀夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/09/05
- メディア: 単行本
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