猫のこと

帰りに通る道で、いつも、猫をみかける。戸建の家の生け垣の下にいつも、やや寝そべった格好でいる白っぽい子。
その道はあまり広くないのに交通量はややあるので、立ち止まって確認したことはない。いつも自転車でびゅう、と通りすぎる時にちら、と見える。「猫だ」と思った時にはもう通り過ぎている。
それが、数日続けて同じ場所に同じ格好でいる。ま、私の帰る時間もほぼ毎日同じくらいだから、それもおかしくはないのだけれど、でもなんかちょっと変だな、と思い始めた。
私は目が悪いので、何かを見誤っている可能性がある。
ちょっと考えた。狭い道だけど、立ち止まることができないわけじゃない。人んちの生け垣の下を覗き込むのが不審だとすれば、何かを落としたふりでもすればよい。確認することは簡単。でも。
私は数日、そこに猫がいる、と思っていた。猫は好きなので何となく嬉しかった。私がそのままそう思っていれば、その子はそこにいる。
そう思って敢えて、立ち止まってみることはしないでした。いつも、その子のことを考えてるわけじゃない。帰り道にびゅう、と通った時に見えて「あ」と思うだけ。だからそこで自転車を減速するようなこともしなかったのだけれど。でもある日ついに減速してしまった。
そして見えたのは、白っぽい葉っぱの観葉植物だった。それが、猫が寝そべったように見えていたのだ。私は目が悪い。
別に、知らなくてもよかったのに。でも、確かめようとして自転車を減速させたのもやっぱり私。