読書

今日は読書デーでした。

あすなろの詩 (角川文庫)

あすなろの詩 (角川文庫)

前半は小ネタ(作者的な)を挟みながら平和が学園物語が進行する。これが半分を過ぎてもトレンディードラマ(死語)な展開なので不安になるが「平和の章」が終わると「殺戮の章」に突入するのでミステリ読みは安心しましょう。ここでは典型的な「嵐の山荘」が用意され、文字どおり殺戮が行われていく。最後は伏線を拾いながらの解決編で終わるミステリの形式は取っている。
主人公甲斐はエンタテイメント小説を愛しており、純文学は殆ど読まない。「小説家を目指しているが書きたいテーマはない」と断言する。これはそのまま作者自身の言葉と見るのは短絡的かもしれないけれど、今後鯨作品を読んでいく上でこのスタンスを知っておくことは重要かもしれない。そう考えると文章は読みやすく展開は分かりやすく、難解なところが一つもなく時々小ネタ(と作者が思っている)ものをはさむことで、エンタテイメントに徹しようとしている姿勢が見えてくる。そこにはテーマもメッセージも何もない。主張をしないことを主張しているのか?主張する方が簡単だからこれはいっそ潔いかもしれない。たとえば村上春樹鯨統一郎を読んで「村上春樹は理解できないけど鯨統一郎は面白かった」と言えないことを鯨統一郎には見抜かれているなぁ、と思った。


直木賞受賞第一作がこれだったとか。借り物。
登場人物たちが成長するので嫌でも取り組まなければならないテーマがあります。今回はそれ。それと、嘘をつくことと本当のことを言うことについて。かれんを傷つけたくなくて嘘をつく勝利と、本当のことを打ち明けた京子ちゃんが対照的に描かれている。嘘をつくことはよくない、というのは原則で、本当のことを言うことで相手を傷つけてしまうこともある。隠し事をしない、っていうのは相手への誠意ではなく自己満足に過ぎないのではないか?と作者は問いかけている。答えは出していない。
成長するにつれ、主人公二人があまり好きじゃなくなってきた。勝利は優柔不断だし、かれんは作中で星野りつ子が言った台詞そのまま(あんなことを言わせるなんて作者ももしかしてそう思ってるのか?)。もーあんたたち勝手にやって周りを巻き込むな、って感じです。媒体がジャンプノベルだからその世代が読んだら面白いんだろうか。ラノベとも違うし、かれんと同世代の女性が読んでも面白いと思えないだろうし。どの世代を狙ってるのかなぁ?謎。