『生贄を抱く夜 (講談社ノベルス)』西澤保彦

「超能力があったら・・・そんなあなたの願望を打ち砕くシリーズ最新作」この帯秀逸です。
お馴染みチョーモンインシリーズ。イラストのほのぼのさと漫画的な描写に惑わされてしまうけど西澤保彦作品は意外にエログロで後味が悪かったりする。『殺し合い』などはその最たるもの。ミステリとしては動機がいつも一番後回しなので「ハウダニット」ものになるだろうか。物語としてのリズムやテンポを大事にしていると思うので動機が取ってつけたようでも全然問題はない。『情熱と無駄』は森奈津子シリーズを思わせるバカ（誉めてます）ぶりに大いに笑わせてもらった。超能力がからむとはいえ人が死んで犯人が判明するミステリの形式を取っているのに、読了してもミステリを読んだ気がしないのはどうしてだろう？どちらかというとアニメを見た後に近い。展開には強引さもかなり目立つ。尺が足りなくて詰め込んでいるのか？というくらいラストが駆け足な作品も幾つか。だから「楽しい」と「あたしちょっとこうゆうのダメ」と感想が分かれるんじゃないかと思う。私は楽しく読みました。ダークさと底抜けの明るさが程よく混ざって溶け合っていなく、両方楽しめてオトクかもしれない。

生贄を抱く夜 (講談社ノベルス)