『ファロットの誘惑―デルフィニア戦記〈12〉 (C・NOVELSファンタジア)』茅田砂胡

ストーリー説明すると前巻までのネタバレになってしまうので割愛。
前も書いたけど作者が拘る部分と全く拘らない部分があって、拘る部分には何ページも割いてエピソードを作りまくるのにそうでないところはさらっと流してしまう。それに慣れないと「?」のまま読み終えてしまう。物語の主幹を描いていて、ただ、それだけだとつまらないので他の、物語には重要ではないけど読者が喜ぶエピソードを書き込んでいるという方が近いかもしれない。このスタンスは何かに似ている?と思うとそれは「マリみて」だ。どちらの作者も読者を煽るのがとても上手い。煽らされて悪い気がしないところも一緒。作者の煽りに気付く読者も気付かない読者も楽しい。こういう作家は読者には圧倒的に支持されるものの、出版社側からはあまり優遇されない印象がある。(茅田砂胡は元々は同人誌作家なので、その印象は間違っていないかもしれない)
ノベルズ版で読んでいるので、沖麻実也の華麗なイラストを見ることができる・・・が、実はあまり合っていない気がした。というのは、小説は漫画的であるのに対し、イラストは絵画的。静止画向きなので動きのある絵が少ない。華麗さはともかくもっと漫画チック(死語?)でもいいような気がした。イラストから「一大叙情ファンタジー」(意味分からないまま使っています)を想像させられるが、実際はそこまでファンタジーのお約束を守った物語ではないと思う。