『彼女は存在しない (幻冬舎文庫)』浦賀和宏

恋人の貴治を殺された香奈子と、妹が殺人者ではないかと疑う根本。二人が交差した時、読者の前に真実が示される。
浦賀、だと思う。寝る前にたまたま枕元にあった積読本の山から取り出して読み始めたら止まらなくなってしまった。読みづらい作家という印象があったけれど、特にそんなことはなかった。『イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)』(乾くるみ)が「読み終えたらまた最初から読みたくなる本」と言われたがこの作品も正にそう。冒頭だけでも読み直してみると、伏線だらけであることに気付く。初読の時に一瞬「あれ?」とは思うが読み飛ばして忘れていたことが伏線になっている。すっかり作者にやられてしまいました。穿って読めば予想は可能かもしれないけど、素直に騙された方が面白いと思う。
作風は全く違うけれど、『殺戮にいたる病 (講談社文庫)』(我孫子武丸)を思い出した。ちょっとグロいシーンがあるところも似ているかもしれない。(読者の予想はつくけれども)

彼女は存在しない (幻冬舎文庫)

彼女は存在しない (幻冬舎文庫)